ロッジ・ケリガンの脚本家/監督としての長編作品には、『クリーン、シェーブン』(93)のほかに、『Claire Dolan』(98)、『Keane』(04)、『Rebecca H. (Return to the Dogs)』(10)などがある。『クリーン、シェーブン』では、長編第1作目の監督デビューでありながら、過剰な演出や劇映画としての定型にはまらない、主人公と彼を取り巻く世界を、静謐かつ哀しくも美しく描き、世界に衝撃を与える。彼の作品は世界中で配給され、カンヌ、サンダンス、トロント、ニューヨーク、MoMAのNew Directors/New Filmsのメインコンペティションを含む数多くの国際映画祭で上映されている。また、スミソニアンのハーシュホーン美術館、アメリカ動画博物館、アメリカ精神医学会の年次大会で展示され、トリノ、ブエノスアイレス、レイキャビクでは回顧展が開催された。ケリガンは、グッゲンハイム財団、ロックフェラー財団、国立芸術基金から奨励金を受けており、世界最古の映画アーカイブであるジョージ・イーストマン・ハウスは、今後の作品を含む彼の全作品を保存対象としている。
最近では、TVドラマでも活躍し、「Homeland/ホームランド」(12)、「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」(14)、「THE KILLING〜闇に眠る美少女〜」(13-14)のエピソードを手掛けたほか、「ガールフレンド・エクスペリエンス」(16-)の共同制作・共同脚本と監督をつとめた。
Jay Rabinowitz
編集:ジェイ・ラビノウィッツ
ニューヨーク大学の映画学科を卒業後、『ダウン・バイ・ロー』(86)にインターンとして参加したのち、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)、『デッドマン』(95)、『コーヒー&シガレッツ』(03)、『ブロークン・フラワーズ』(05)、『リミッツ・オブ・コントロール』(09)といったジム・ジャームッシュ作品の常連スタッフとして編集を手掛ける。『クリーン、シェーブン』では、主人公の視点と不穏かつ不条理で無慈悲な世界において切迫し行く精神状態を細やかな編集で表現した。その他、その手腕は、『8 Mile』(02)、『ツリー・オブ・ライフ』(11)、『ある少年の告白』(18)、『スイング・ステート』(20)、『The United States vs. Billie Holiday』(21)などで幅広く発揮されている。『レイクエム・フォー・ドリーム』(00)で、フェニクス映画批評家協会とオンライン映画批評家協会で最優秀編集賞を受賞。2012年には、全米映画編集者組合が、『レイクエム・フォー・ドリーム』と『ツリー・オブ・ライフ』を“史上最高の映画編集リスト”に追加。
Teodoro Maniaci
撮影監督:テオドロ・マニアチ
タフツ大学で学士号を取得後、ニューヨーク大学大学院映画TV学科で美術修士号を取得。ロッジ・ケリガン監督との『クリーン、シェーブン』や『Claire Dolan』の後、長編映画、ドキュメンタリー、TVドラマ、CMなど数多く撮影。その中には、第17回サンダンス映画祭 審査員特別賞を受賞した『The Tao of Steve』(00)、コダック賞撮影賞を受賞した『Searching for Paradise』(02)、『バース・オブ・ザ・ドラゴン』(16)などの長編映画やTVドラマ「デッドウッド 〜銃とSEXとワイルドタウン」(05)、「パーソン・オブ・インタレスト」(11-12)、「ウエストワールド」(18)などがある。撮影監督としての仕事以外に、『One Nation Under God』(93)を監督。この作品は、ゲイやレズビアンを異性愛者に変えようとするために使われてきた、右翼的で宗教的な手法の長い歴史について、政治的な分析を込めたドキュメンタリーである。
Tony Martinez
音響編集監修:トニー・マルティネス
ニューヨークで35年以上にわたりポストプロダクションに携わってきた。『クリーン、シェーブン』(93)でのロッジ・ケリガン監督との緊密なコラボレーションに加えて、へクトール・バベンコ監督の『Foolish Heart』(98)、ロバート・フランク監督の『Last Supper』(92)、ポール・シュレイダー監督の『白い刻印』(97)、ニール・バーガー監督『Interview with the Assassin』(02)、ミーラー・ナーイル監督『悪女』(04)などで手腕を発揮している。他のサウンド編集クレジットには、アンソロジー『ニューヨーク・ストーリー』(89)のマーティン・スコセッシ監督による第1話「ライフ・レッスン」、スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)、サム・メンデス監督『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(08)、ダーレン・アロノフスキー監督『レスラー』(08)、ウェス・アンダーソン監督『ファンタスティックMr.FOX』(09)などがある。 さらに、トッド・ヘインズ監督のTVドラマ「ミルドレッド・ピアース 幸せの代償」(11)ではエミー賞にノミネートされた。最近では、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督の『ハロウィンKILLS』(21)でダイアローグの監修とADR編集を手掛け、現在、TVドラマ「EVIL」(19-)のADR監修、同じくテレビシリーズ「THE GOOD FIGHT」(21-)の音響監修を担当している。
CAST
Peter Greene
ピーター・ウィンター役:ピーター・グリーン
1965年ニュージャージー州生まれ。1990年代よりTVシリーズに出演し、『Laws of Gravity』(92)でスクリーンデビュー。『クリーン、シェーブン』(93)では、苦悩する主人公ピーター・ウィンターを鮮烈かつ繊細に演じた。『ジャッジメント・ナイト』(93)ではエミリオ・エステベスらと共演、『パルプ・フィクション』(94)では悪徳警官、『マスク』(94)では悪役、『ユージュアル・サスペクツ』(95)でも印象的な怪演を見せ話題作に相次いで出演。『バニシング・ヒーロー』(96)、『トレーニングデイ』(01)、近年では『テスラ エジソンが恐れた天才』(20)とコンスタントに映画出演を続けている性格俳優である。
忘れられない映画体験だ。